外国人トラックドライバー、日本でも始まる──特定技能「自動車運送業」のいまを整理する
どうも、タイガです。今回のお届け物は「業界の動き」編。テーマは特定技能の外国人トラックドライバーです。
以前、アメリカのトラックは移民が運んでいるという話を書きました。あのとき僕は「アメリカで起きたことは、数年後に日本で起きる」と言ったんですが──その「数年後」が、もう始まっています。2024年、在留資格「特定技能」の対象に自動車運送業が加わり、外国人がトラックドライバーとして日本で働く道が、制度として正式に開きました。今日はこの制度の中身と、いまどこまで進んでいるのかを整理します。
「自動車運送業」が特定技能に加わった
特定技能というのは、人手不足が深刻な分野に限って、一定の技能と日本語力を持つ外国人の就労を認める在留資格です。介護や建設、外食などで先行していて、2024年3月の閣議決定で自動車運送業──トラック・タクシー・バスの3区分──が新たに追加されました。
2万2,100人という数字は「上限」であって目標ではありませんが、国が「外国人ドライバーで穴を埋める」方向に舵を切ったことは間違いありません。ドライバー不足は2024年問題で拘束時間の上限が締まったぶん、さらに厳しくなっていますから、流れとしては自然です。
ドライバーになるまでの3つのハードル
とはいえ、「明日から外国人がトラックに乗れる」という話ではありません。トラック区分の場合、働き始めるまでに大きく3つの関門があります。
1つ目は技能試験。「自動車運送業分野特定技能1号評価試験」という試験に合格する必要があります。実施しているのは日本海事協会(ClassNK)で、運行前後の点検や運転操作の基礎、荷扱い、安全運行の知識などが問われます。
2つ目は日本語。トラックは日本語能力試験のN4以上、またはJFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト)の合格が要件です。ちなみに旅客を乗せるタクシー・バスは、接客があるぶん一段高いN3以上が求められます。
3つ目が、実はいちばん高い壁かもしれない日本の運転免許です。
ダメなんです。日本国内を業務で走るには日本の第一種免許(トラックの大きさに応じて準中型・中型・大型)が必要で、母国の免許を日本の免許に切り替える外免切替という手続きを踏むか、日本の教習所で一から取ることになります。
免許の壁──外免切替は厳しくなった
その外免切替が、2025年10月から大きく変わりました。それまでは知識確認が10問というシンプルな試験だったのですが、制度が見直されて、住民票の提出が必須になり(観光などの短期滞在では原則申請できない)、知識確認は50問・9割正答に、技能確認も採点が厳格化されました。
きちんと日本に居住して、日本のルールを理解した人だけが免許を持てるようにする──方向性としては安全のための見直しです。ただ、特定技能で来るドライバーにとっては、入国してから実際にハンドルを握るまでの道のりがそのぶん長くなったということでもあります。企業側は免許取得の支援まで含めて受け入れを設計する必要があります。
受け入れる会社側にも義務がある
ハードルは外国人側だけではありません。受け入れる運送会社にも条件があります。
まず、国土交通省が設置する自動車運送業分野特定技能協議会への加入。それから、報酬は同じ仕事をする日本人と同等以上であること。安い労働力として使うことは制度上できません。さらにトラックの場合、乗務を始める前に初任運転者研修などの安全教育をきちんと実施することが求められます。
で、実際どれくらい来ているのか
制度は整いました。では現場はどうか。
151人。全国のトラックドライバーは約80万人いますから、割合でいえばまだ0.02%。アメリカの「雇用ドライバーの約18%が移民」という世界とは比べものになりません。ただ、半年で15倍というペースと、試験合格者の積み上がりを見ると、これは「始まっていない」のではなく「入口に人が並び始めた」状態だと僕は見ています。
思い出してほしいのは、アメリカでも移民ドライバーが物流の柱になるまでに40年かかったということです。そしてその過程で、言葉の壁や安全の問題、待遇をめぐる摩擦もありました。日本はこれから同じ道を、より短い時間で歩くことになります。試験と研修で入口の質を担保し、報酬の同等性で待遇を守る──日本の制度設計には、先行した国々の教訓が織り込まれているように見えます。あとは、それが現場でちゃんと機能するかどうかです。
タイガのひとこと
正直に言うと、最初にこの制度の話を聞いたとき、複雑な気持ちがなかったと言えば嘘になります。俺たちの仕事は誰にでもできる仕事じゃない、という自負があるからです。
でも、考えてみれば僕らの隣のマスに停まるのが誰であれ、求められるものは同じです。点呼を受けて、荷物を無事に届けて、安全に帰ってくる。それができる人なら、国籍がどこであれ仲間です。むしろ心配なのは、言葉のサポートや教育を惜しんだ会社で事故が起きて、「外国人ドライバーは危ない」というレッテルだけが残ること。制度の質は、受け入れる僕らの側が決めるんだと思います。
今日もご安全に。


