深夜のSA・PAはなぜ満車なのか──「休みたくても停められない」駐車マス問題のいま
どうも、タイガです。今回のお届け物は「現場のリアル」編。テーマはSA・PAの駐車マス問題です。
深夜の東名や新東名のSA・PAに入ったことがある人なら、あの光景を知っていると思います。大型マスはびっしり満車。通路にも、小型マスにも、ランプウェイの路肩にまでトラックが並ぶ。僕らは休憩したくて停めたいのに、停める場所を探して次のPA、また次のPAへ──。今日は、この「休みたくても停められない」問題の中身と、いま進んでいる対策の話です。
深夜のSA・PAは、なぜ満車なのか
まず実態から。幹線のSA・PAでは、夜間を中心に大型車マスの慢性的な混雑が続いています。高速道路会社は駐車マスを増やし続けてきたのですが、それ以上に駐車需要が増えていて、追いついていないのが現状です。
混雑の中身を見ると、意外な事実が浮かび上がります。
しかも混雑がひどいのは、都心など荷卸し地点に近いSA・PAです。翌朝の納品時刻に合わせて、前の晩から目的地の手前で停まって待つ。この「時間調整」の駐車が、深夜の満車をつくっている大きな要因です。
「休め」と言われても、停める場所がない
ここに制度の矛盾があります。ドライバーには改善基準告示というルールがあって、連続運転は4時間以内、合計30分以上の休憩を挟まなければなりません。1日の勤務の間には継続9時間以上の休息期間も必要です。つまり法律は「走り続けるな、休め」と言っている。
ところが、その休憩を取るための駐車マスが埋まっている。
詰みかけている場面は、実際にあります。休憩のつもりで入ったSAが満車で、やむなく次まで走って連続運転の上限ぎりぎりになる。危ないから路肩に停めれば、今度は事故のリスクです。「停める場所」は快適さの問題ではなく、安全と法令遵守の土台なんですよ。2024年問題で拘束時間の管理が厳しくなったぶん、この矛盾はより切実になりました。
広げる──駐車マスの拡充
対策の1本目は、シンプルに「増やす」です。NEXCO3社は毎年まとまった数の大型車マスを増設していて、2025年度は全国21箇所のSA・PAで約450台を拡充、2026年度は23箇所で約520台の増設工事を予定しています。
ただ、SA・PAの敷地は限られています。そこで工夫が生まれました。たとえばNEXCO西日本が導入したV字駐車。バックで入れて前進で出る配置を斜めに組み合わせることで、同じ面積でも駐車台数を約1.4倍にできます。ほかにも、大型車と小型車のどちらでも使える兼用マスへの転換、園地のレイアウト変更、さらには大型車専用駐車場の新設や駐車可能台数を約2倍にするPA改良まで、あの手この手です。
分ける──60分の「短時間限定駐車マス」
対策の2本目は「増やす」ではなく「回す」です。2023年11月から実証が始まった短時間限定駐車マスは、大型車マスの一部を「60分以内専用」にする取り組み。長時間駐車の車で埋まらない枠を確保しておくことで、「ちょっと仮眠したい」「トイレと食事だけ」というドライバーが確実に停められるようにします。
実証で利用台数や回転率の向上が確認できたため整備は拡大していて、仙台〜福岡の政令市を結ぶ路線を中心に2025年度までに44箇所が完了、2026年度もさらに10箇所の整備が予定されています。カメラの画像処理で60分を超えた駐車を検知して案内する、適正利用の仕組みも入り始めました。
このほか、ダブル連結トラック用の予約駐車マスのように、「予約して確実に停める」方向の整備も進んでいます。
お金で変える?──有料化の議論
そして3本目が、いちばん賛否の分かれる話。国の検討会の中間とりまとめでは、一定時間を超える駐車を有料にする案が示されています。たとえば2時間までは無料、それを超える長時間駐車からは料金をいただく。混雑が特にひどい路線では、休憩施設の駐車を順次有料化していく方向性まで検討されています。
狙いは「時間調整のための長時間駐車」を高速の外の駐車場や中継拠点に分散させて、本来の休憩のための駐車を守ること。ただ、現場からすれば「休息期間の9時間を取ったら課金されるのか」という不安もあります。制度設計しだいで、良薬にも毒にもなる話です。
根っこには「時間調整」がある
ここまで読んで気づいた人もいると思いますが、この問題の根っこは駐車場の外にあります。長時間駐車の多くは、荷主の指定時刻に合わせるための時間調整。つまり荷待ち時間の問題と地続きです。納品時刻に幅を持たせる、深夜着を朝着に変える、バース予約で到着を平準化する──荷主側の運用が変われば、SA・PAの深夜の満車は確実に軽くなります。
駐車マスを増やすのは高速道路会社。でも、駐車マスを空けられるのは、荷主と運送会社を含めた業界全体なんです。
タイガのひとこと
満車のSAを3つはしごして、4つ目でやっと停められた夜のことは今でも覚えています。エンジンを切った瞬間の、あの安堵。大げさでなく「今夜の寝床を確保した」という感覚でした。
白線1本、枠ひとつの話に見えて、これはドライバーの睡眠と、そのまま道路の安全の話です。拡充も、短時間マスも、有料化の議論も、向かう先が「休みたい人が確実に休める」なら、僕は前向きに見ています。
今日もご安全に。
3人でひとこと
出典
- 高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する検討会「高速道路SA・PAにおける利便性向上の方向性 中間とりまとめ」(令和5年2月・PDF)
- 高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する検討会「高速道路の現状の分析と課題について」(令和4年11月・PDF)
- NEXCO東日本ほか「休憩施設における利便性向上に関する取組みについて」(2026年5月)
- NEXCO西日本「休憩施設における大型車駐車マス拡充の取組みについて」(V字駐車)
- NEXCO中日本「中京圏における2026年度の休憩施設の大型車駐車マス拡充に関する取組みについて」
- NEXCO3社「大型車ドライバーのより確実な”休憩”機会を確保する実証実験を今秋から順次開始します」(2023年9月)
- NEXCO東日本「短時間限定駐車マスの運用を開始しました」(2025年11月)
- 厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト」(改善基準告示)


