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運送業は紙だらけ──日本で進む「ペーパーレス化」と物流DXの今

どうも、タイガです。今回のお届け物は「日本の運送業の取組み」編。テーマはペーパーレス化とDXです。

前回はロボットが荷降ろしする海外の話をしましたが、今回はぐっと足元の話。トラックに20年乗ってきて思うのは、この業界、とにかく紙が多いってことです。点呼記録簿、運転日報、日常点検表、納品伝票、受領書──1日走れば、紙とハンコとサインのオンパレード。

その紙が今、日本でも本格的に減り始めています。国の制度も動きました。今日はその「今どこまで来てるのか」を整理します。

運送業は、実は「紙」だらけ

まず現状から。運送会社の事務所に行くと、壁一面のファイル棚に紙の帳票がびっしり、という光景は珍しくありません。

とらぼとらぼ
ふっふっふ、これには理由があるのだ。運送業は法律で記録と保存が義務づけられた帳票が多いのだ。点呼の記録、乗務の記録(運転日報)などは1年間の保存義務がある。つまり「書く」だけじゃなくて「取っておく」仕事でもあるのだ。えっへん。

ドライバー目線で言うと、一番身近なのは日報です。1日走り終えて、疲れた体で事務所に戻って、手書きで運行記録を書く。あれ、地味にしんどいんですよね。そして納品先では紙の伝票を渡して、受領印をもらって、控えを持ち帰る。この紙のやり取りのために、荷受けの窓口で並んで待つこともあります。

ちびトラちびトラ
言われてみれば、トラックの助手席って書類ケースが必ず置いてありますね……。

国も本気になった──「物流DX」という旗

この状況に対して、国土交通省は「物流DX」という旗を掲げています。ポイントは、単に紙をPDFにするだけじゃなくて、機械化・デジタル化を通じて物流のやり方そのものを変えようという考え方です。

しかも「大手だけの話でしょ」で終わらせないために、国交省は中小の物流事業者向けのデジタル化の手引きまで作って公開しています。この中では、点呼、車両点検、日報作成といった業務が「自社だけで完結できて、デジタル化しやすい工程」として挙げられていて、実際の中小運送会社の導入事例も載っています。

要するに、国の見立てもこうなんです。ペーパーレスの入口は、点呼と日報。ドライバーの実感と一致してますよね。

実際どれだけ減るのか──国の実証で出た数字

「デジタル化って言うけど、実際どれだけ効果あるの?」──ここが一番知りたいところですよね。実は国交省が、実在の運送会社3社で実験して、数字を公表しています。「中小物流事業者における物流業務のデジタル化実証」です。ポイントは、月額1,000円からの安いツールを使って「中小でも手が届く形」で実験したこと。結果がなかなか衝撃的でした。

1社目は、鉄鋼輸送のテック物流(社員125名)。 荷主のサステックと一緒に、見積・受注から検品・請求までツールでつなぎました。結果は1営業所あたり作業時間が月121時間削減、紙の帳票が月4,230枚削減。積込時の検品を二次元バーコードにしたら、目視で起きていた検品ミスが実質ゼロになりました。受領書も電子サインにしたことで、従来2〜3日かかっていた関係者への送付がその場で即時共有に。

2社目は、工業部品輸送の大友ロジスティクスサービス(社員1,975名)。 こちらは事務処理が中心で、1営業所あたり作業時間が月1,899時間、紙帳票が月78,415枚の削減という数字が出ました。しかも内訳を見ると、78,415枚のうち77,200枚が請求書関係。運送会社の紙の山の正体は、実は請求業務だったわけです。

ちびトラちびトラ
つ、月に78,000枚!? 1営業所でそんなに紙を使ってたんですか……。

3社目は、山九。 こちらはドライバーの仕事に直結する話で、届け先に着いたとき・荷役を始めるときにスマホのボタンを押すだけで、荷待ち時間が自動で記録・可視化される仕組みを試しました。輸送距離と重量を入れればCO2排出量も自動算出。そして副産物として、作業実績が自動で残るのでドライバーの日報作成そのものが不要になりました。

ちなみに「荷待ち時間の記録なら、うちのデジタコでもできるよ」という人もいると思います。その通りで、最近のナビ型デジタコには作業ステータスボタンがあって同じことができます。この実証のミソは2つ。デジタコを全車に積む体力がない会社でも、手持ちのスマホと安いツールで同じことができると示したこと。そして、荷待ちデータを荷主も同じ画面で見られること。荷待ちを減らすには荷主に動いてもらうしかないので、「荷主に見せられる形」になっていることが大事なんです。

実証のまとめとして国交省が挙げた結論も、現場感があって良いんです。いわく──低コストのツールでも効果は出る。業務の一部だけの「部分導入」でも効果は出る。ただし、効果を最大化するには荷主と一緒に使う必要がある

紙の伝票が、消え始めた

そして2025年、大きな動きがありました。改正物流効率化法です。2025年4月から、荷主と物流事業者に「物流を効率化するための措置を講じる」努力義務が課されました。荷待ち時間や荷役時間の削減がその柱で、具体策のひとつとして注目されているのが納品伝票の電子化です。

紙の伝票って、実は運ぶ側だけの問題じゃありません。荷主側は印刷して、仕分けして、保管して、廃棄する。届ける側は受け渡しと検品で待たされる。紙1枚の裏に、双方の手間がぶら下がってるんです。

実際に動いた例もあります。日用品メーカーのサンスターは2023年8月から受発注伝票の電子化のテストを始めていて、納品時の検品作業を簡素化して荷受け時間を短縮する、という成果につなげています。荷主側が伝票レスに動いてくれるのは、ドライバーとしては素直にありがたい話です。

ちびトラちびトラ
納品先でハンコ待ちの列に並ぶ時間が減るってことですか? それは大きいです!

そういうことです。荷待ち・荷役の時間は俺たちの拘束時間の大きな部分ですから、伝票のデジタル化は「事務の話」に見えて、実はドライバーの労働時間の話なんです。

点呼と日報も、デジタルに変わってきた

事務所側のペーパーレスも進んでいます。

点呼は、カメラやIT機器を使って離れた場所から行う遠隔点呼が制度化され、さらに2025年4月30日にはロボットや機器が点呼を行う業務前自動点呼も正式に制度化されました。点呼がデジタルになれば、紙の点呼記録簿は自動的にデータで残ります。このあたりは点呼ロボットの記事で詳しく書いたので、そちらもどうぞ。

日報のほうは、デジタコ(デジタル式運行記録計)やクラウド型の運行管理システムが担い手です。走行データから日報が自動で作られるので、帰着後の手書き作業がなくなる。ナビの記事で紹介したナビ型デジタコも、この流れの中にある道具です。

とらぼとらぼ
整理するとこうなのだ。「点呼」「日報」「伝票」──運送業の三大紙仕事に、それぞれデジタルの受け皿がもう用意されている。制度も2025年までにひと通り揃った。あとは現場に広がるかどうか、の段階なのだ。

じゃあ、なんですぐ広がらないのか

とはいえ、現場の実感として「うちはまだ全部紙だよ」という会社も多いはずです。理由ははっきりしています。

まず相手がある仕事だということ。自社の日報はデジタル化できても、納品先が「紙の伝票にハンコ」を求めれば、紙は消えません。さっきの国の実証でも、一番の課題に挙がったのは「荷主に利用を提案することの難しさ」でした。だから今回の法改正で、荷主側にも努力義務がかかったことに意味があるんです。

もうひとつはコストと人。システムの導入費用もそうですし、「パソコンが得意な人が事務所にいない」という現実もあります。だからこそ国は中小向けの手引きや支援事業を用意しているわけですが、ここはまだ道半ばです。

一番もったいないのは、デジタル化したのに念のため紙も残す「二重運用」。これをやると手間がむしろ増えます。やるなら思い切って置き換える。ここが分かれ目だと思います。

タイガのひとこと

俺は、ペーパーレスは「事務員さんの仕事の話」だと思われがちなのが、ずっと引っかかっています。日報の手書きも、伝票のハンコ待ちも、削られているのはドライバーの時間です。紙が1枚減るごとに、俺たちが家に帰る時間が少し早くなる。そう考えると、これは立派に現場の話なんです。

会社がシステムを入れると言い出したら、「面倒くさそう」じゃなくて「早く帰れるかも」で構えてみてください。

今日もご安全に。

3人でひとこと

ちびトラちびトラ
運転日報とか点呼簿に1年の保存義務があるって初めて知りました。紙の山には理由があったんですね……。
タイガタイガ
俺は荷主側の伝票電子化に注目してるな。運ぶ側だけが頑張っても紙は消えない。荷主が動き始めたのが、今回の一番の変化だと思う。
とらぼとらぼ
ふっふっふ、僕のおすすめは国交省の「中小事業者向けデジタル化の手引き」なのだ。無料で読めて事例つき。会社の人に「これ見て」と渡すだけでも一歩前進なのだ。
タイガタイガ
紙とハンコの時代の終わりは、残業の時代の終わりでもあってほしい。まずは自分の会社の「紙仕事」を数えるところからです。

出典