海外の倉庫では、もうロボットが荷降ろしをしている──「フィジカルAI」はどこまで来たか
どうも、タイガです。今回のお届け物は「世界の物流」編です。
ChatGPTみたいな生成AIの話は、もうさんざん聞きますよね。でもあれは、画面の中の話。俺たちの仕事は、重い荷物を持ち上げて、積んで、降ろして、運ぶ──体を使う仕事です。
じゃあ、AIが「体」を持ったらどうなるのか。実は今、世界の物流業界で一番熱いのがこのテーマでして。「フィジカルAI」なんて呼ばれています。海外の倉庫では、もうロボットがトラックの荷降ろしをやってるんです。今日はその「今どこまで来てるのか」を、現場の目線で見ていきます。
「フィジカルAI」って何だ
言い出しっぺの中心にいるのが、半導体大手のNVIDIA(エヌビディア)です。ロボット用のAIモデルを次々と公開していて、世界中のロボットメーカーがそれを使って開発を進めています。
ポイントは訓練のやり方です。現実世界でロボットに失敗させると時間もお金もかかる。だから、物理法則を再現した仮想空間の中で何百万回も練習させてから、実物のロボットに覚えさせる。人間で言えば、めちゃくちゃリアルな運転シミュレーターで練習してから路上に出るようなものです。この方法のおかげで、ロボットの成長スピードが一気に上がりました。
そういうことです。で、ここからが本題。「もう現場に出てる」やつらを紹介していきます。
トラックの荷降ろしを、ロボットがやっている
まずはドライバーとして一番気になるやつから。コンテナやトレーラーの荷降ろしロボットです。
ボストン・ダイナミクスというアメリカのロボット会社が作った「Stretch(ストレッチ)」。台車に太いロボットアームが載ったような形で、トレーラーの中に入り込んで、積まれた段ボールを吸着パッドで掴んでは降ろしていきます。
これを世界最大手の物流会社DHLが2023年から実際の倉庫で使い始めていて、1時間に最大700ケースを降ろした実績が出ています。そして2025年5月、DHLは「2030年までに1,000台以上を追加導入する」という覚書をボストン・ダイナミクスと結びました。北米から始まって、イギリス、ヨーロッパへと広がっています。
手積み手降ろしをやったことがある人なら分かると思いますが、夏のコンテナの中って、サウナどころじゃないんですよ。あの作業をロボットが代わってくれるなら、正直、悔しさより先にありがたさが来ます。
Amazonの倉庫は、ロボットが100万台
規模で言えばこれが世界最大です。Amazonは2025年7月、倉庫用ロボットの稼働台数が100万台に到達したと発表しました。しかも記念すべき100万台目が配備されたのは、日本の物流拠点なんです。
世界300か所以上の拠点で、棚を持ち上げて運ぶロボット、仕分けするロボットアームなんかが人間と一緒に働いています。
ロボットにも渋滞があって、AIの渋滞予測で回避する。前回のナビの記事で「AIが渋滞を予測する」話をしましたが、まったく同じことが倉庫の中でも起きてるわけです。
人型ロボットも、もう「就職」している
ここまでは専用機の話。でも「フィジカルAI」の象徴といえば、やっぱり人型ロボットですよね。
アメリカの物流大手GXOの倉庫では、Agility Robotics社の人型ロボット「Digit(ディジット)」が2024年6月から正式に働いています。身長約175cm、二本足で歩いて、コンテナ(トート)を持ち上げてはコンベアに載せる作業を担当。人型ロボットが実際の職場に「商用導入」されたのは、これが業界初と言われています。
しかも月額課金のサービス契約、いわばロボットの派遣契約みたいな形で働いていて、2025年11月には累計10万トートを運んだと発表されました。
とはいえ、今のところ任されているのは「決まった場所で、決まった物を、決まった所へ動かす」仕事です。人間みたいに何でもできるわけじゃない。ここ、あとで大事になるので覚えておいてください。
じゃあ日本は? ──自動フォークリフトが動き出した
「どうせ海外の話でしょ」と思うかもしれませんが、日本の現場でも始まっています。
フォークリフトの国内最大手・豊田自動織機は、トラックの荷台への積み込みまでできる自動運転フォークリフトを開発。花王の愛知の工場倉庫で2024年から実際に稼働していて、2025年にはトヨタL&Fブランドで販売も始まりました。倉庫の中をフォークリフトが無人でスーッと走って、パレットをトラックに積んでいく。あの光景が、もう現実にあるんです。
ドライバー目線で言うと、これは結構大きい話です。荷積み・荷降ろしの待機時間って、俺たちの労働時間の中でもかなりの割合を占めてますから。倉庫側の自動化が進めば、「着いたけど積んでもらえるのは2時間後」みたいな時間が減っていく可能性があります。
で、俺たちの仕事はなくなるのか
ここまで読むと「もう人間いらないじゃん」と思うかもしれません。でも、冷静に見るとこうです。
今ロボットができているのは、倉庫という整った環境の中の、決まった作業です。荷降ろしロボットのStretchも、今のところ得意なのは形の揃った段ボール。人型のDigitも担当は決まった手順の繰り返し作業。一方、俺たちの仕事は毎日違う場所に行って、毎日違う荷物を、毎日違う条件で運びます。雨の日の狭い路地でのバック、荷主ごとに違うルール、急な変更への対応──この「毎日違う」への対応力は、まだ当分、人間の仕事です。
それに、きつい作業から順にロボットが引き受けてくれるなら、それは俺たちの体を守ってくれる話でもあります。腰痛を抱えながら働いている仲間を、俺は何人も見てきました。灼熱のコンテナの手降ろしがロボットの仕事になるなら、俺は歓迎します。
タイガのひとこと
前にアメリカのドライバー事情の記事でも書きましたが、俺の持論は「アメリカで起きたことは、数年後に日本で起きる」です。荷降ろしロボットも、100万台の倉庫も、人型の同僚も、海の向こうではもう現実でした。なら、日本の現場に来るのも時間の問題です。
そのとき慌てないように、「今どこまで来てるのか」だけは知っておく。この記事がその一歩になれば嬉しいです。
今日もご安全に。
3人でひとこと
出典
- Amazonが100万台目のロボットを日本に導入。DeepFleet生成AIモデルによってさらなる効率化を目指す(About Amazon Japan)
- NVIDIA が新しいフィジカル AI モデル群をリリース(NVIDIA Japan Blog)
- 国内初の4本フォークタイプのトラック荷役対応自動運転フォークリフト実稼働へ(豊田自動織機)
- 自動化・無人化 製品情報(トヨタL&F)
- サプライチェーンのイノベーション(DHLサプライチェーン 日本)
- Digit Moves Over 100,000 Totes in Commercial Deployment(Agility Robotics・英語)


