災害のたびに、トラックは走ってきた──東日本大震災・熊本・能登、支援物資輸送の歴史
どうも、タイガです。
7月28日、熊本で最大震度7の大きな地震がありました。被害に遭われた方に、心からお見舞い申し上げます。余震も続いています。どうか安全を最優先にしてください。
こういうとき、俺たちトラックドライバーは無力じゃありません。むしろ、災害のたびに日本の物流業界は動いてきた。今回はその歴史を振り返ります。過去に業界がどう動いたかを知ることは、今まさに動いている支援を理解することにつながるはずです。
実は「国から指定された」災害対応の担い手
まず前提として知ってほしいことがあります。日本通運、ヤマト運輸、佐川急便、西濃運輸、福山通運といった大手運送会社は、災害対策基本法にもとづく**「指定公共機関」**に指定されています。
つまり支援物資輸送は、善意のボランティアであると同時に、業界に課された公式な役割でもあるんです。
東日本大震災(2011年)──すべての原点
今の災害物流の仕組みは、2011年の東日本大震災の反省から生まれたと言っていいと思います。
あのときの最大の教訓は、「物資はあるのに届かない」でした。全国から救援物資は集まった。でも、集積所で山積みのまま止まってしまった。仕分けのノウハウがない、どの避難所に何が要るか分からない、燃料が足りない──「物流のプロ抜き」で物資を動かすことの限界が、はっきり見えてしまったんです。
この反省から、「災害時こそ物流のプロに任せる」という考え方が国の防災計画に組み込まれていきました。
2016年熊本地震──「プッシュ型支援」の始まり
10年前の熊本地震は、災害物流の転換点でした。国が初めて本格的に**「プッシュ型支援」**を実施したんです。
いい質問だな。普通の支援は、被災地から「水が足りない」「毛布がほしい」と要請が来てから送る「プル型」。でも被災直後の自治体は、それどころじゃない。だから要請を待たずに、国の判断で物資を送り込む。これがプッシュ型です。
現場では運送会社の底力が光りました。佐川急便のドライバーは避難所を回って「何が足りませんか」と要望を聞き、行政にフィードバックする「ご用聞き」を実践。物流企業各社の緊急物資輸送に対して、農林水産大臣から感謝状が贈られています。
能登半島地震(2024年)──発生45分後に動いた業界
2024年1月1日の能登半島地震では、業界の初動が段違いに速くなっていました。全日本トラック協会は地震発生から45分後に対策本部を設置。指定公共機関の大手7社と連携して、緊急物資輸送の体制を組みました。
輸送はリレー方式です。全国から石川県の集積拠点まで運ぶ「1次輸送」、そこから市や町の物資拠点までの「2次輸送」、そして各避難所へ届ける「3次輸送」。道路が寸断された半島の先端へは、自衛隊のヘリや船、ドローンまで組み合わせて物資をつなぎました。
そして一番むずかしい「ラストワンマイル」──避難所への最後の配達は、佐川急便、ヤマト運輸、地元のトナミ運輸などが担い、物資拠点の管理や仕分けのノウハウ提供までやってのけた。東日本大震災で「山積みのまま止まった」物資が、能登では流れるようになっていたんです。
そして今、令和8年熊本地震
今回の熊本の地震でも、同じ仕組みがすでに動き始めています。国はプッシュ型支援の実施を表明し、物資輸送の調整が進んでいます。一方で、被災地域では宅配便の集配停止や遅延も起きています。
15年かけて磨かれてきた「災害物流」の仕組みが、今まさに試されている。俺たちの業界には、それだけの経験と備えがあります。
じゃあ、その中で運送会社は、そして一人のドライバーは、具体的に何ができるのか。それは次の記事で、現場の目線から書きます。
タイガのひとこと
災害のニュースを見ると、避難所に積まれた段ボールが映ります。あの段ボールは、勝手にそこに現れたわけじゃない。誰かがハンドルを握って、崩れた道を選びながら運んだものです。
トラックは平時には当たり前すぎて見えない存在だけど、非常時には命綱になる。この仕事の意味を、災害のたびに思い知らされます。
今日もご安全に。
3人でひとこと
出典
- 熊本県で震度7の地震 津波発生のおそれ(日本気象協会 tenki.jp)
- 「プッシュ型」で支援物資を被災地へ…熊本地震、クーラー300台を自衛隊機で空輸計画(読売新聞/Infoseekニュース)
- 熊本地震の初動対応における物資輸送に関する研究(東京大学生産技術研究所)
- 熊本地震の際の緊急物資輸送にたいして農林水産大臣より感謝状(西濃運輸)
- 能登半島地震の緊急物資輸送を検証する! 継承された東日本大震災の尊い「教訓」(フルロード)
- 能登半島地震でも大活躍の「物流事業者」、物資輸送に奮闘する「苦闘と功労」の舞台裏(ビジネス+IT)
- 令和6年能登半島地震における各省庁の物資調達・輸送に係る対応状況(内閣府防災)


