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世界の物流

アメリカのトラックは移民が運んでいる──外国人ドライバー大国の「今」と、数年後の日本

どうも、タイガです。今回のお届け物は「世界の物流」編、行き先はアメリカです。

なんでアメリカかというと、俺にはひとつ持論がありまして。アメリカで起きたことは、数年後に日本で起きる。 コンビニも、ネット通販も、ライドシェアもそうだった。だったらトラックの世界も、アメリカの「今」を見れば日本の「数年後」が見えるはずなんです。

そして今のアメリカのトラック業界で一番熱いテーマが、「外国人ドライバー」なんです。

アメリカのトラックは、誰が運んでいるのか

とらぼとらぼ
ふっふっふ、まずはデータからいくのだ。アメリカでは雇用されているトラックドライバーの約18%が移民。外国生まれのドライバーは2000年の約31.6万人から2021年には72万人超へと、20年で2倍以上に増えています。えっへん。

5〜6人にひとりが移民。日本の感覚だと、ちょっと想像がつかない数字ですよね。

中でも有名なのが、インド・パンジャブ地方にルーツを持つシク教徒のコミュニティです。全米に約75万人いるシク教徒のうち、およそ15万人がトラック業界で働いていると言われていて、カリフォルニア州ではドライバーの4割がパンジャブ系という推計もあるほど。ハイウェイ沿いにはインド料理のトラックストップが並び、パンジャブ語のトラック業界誌まであるそうです。

なぜそこまで増えたのか

理由は単純で、アメリカも人手不足だからです。

アメリカのトラックドライバーの平均年齢は55歳前後。若い人が入ってこなくて、ベテランが引退していく。……どこかで聞いた話だと思いません? そう、日本とまったく同じ構図なんです。

その穴を埋めたのが移民でした。トラックドライバーは学歴や英語力のハードルが比較的低く、頑張れば稼げる仕事。だから新しくアメリカに来た人たちの「最初の階段」になり、コミュニティの先輩が後輩を呼び、40年かけて物流の柱に育っていった。これがアメリカの姿です。

ところが今、その前提が大きく揺れている

ちびトラちびトラ
タイガさん、「揺れている」ってどういうことですか?

きっかけのひとつは、2025年8月にフロリダの高速道路で起きた事故です。インド出身のドライバーが運転する大型トレーラーが規制退出路で違法なUターンをして、ミニバンの3人が亡くなった。ドライバーの在留資格や英語力が問題視されて、「外国人ドライバーの免許はこのままでいいのか」という議論が一気に全国に広がりました。

そこから規制が立て続けに動きます。

まず英語力。2025年4月に大統領令が出て、商用ドライバーの英語力要件の執行が厳格化。同年6月からは、検問で英語力が不十分と判断されると、その場で運行停止(アウト・オブ・サービス)になりました。標識が読めない、警察官とやり取りできないドライバーは走らせない、という理屈です。

次に免許制度。2026年3月に施行された新ルールで、米国に住所を持たない人向けの商用免許(ノン・ドミサイルCDL)の発行対象が大幅に絞られました。難民や亡命申請中の人は事実上、取得も更新もできなくなり、対象となる在留資格は一部の就労ビザだけに。しかも年1回、対面での更新が義務になりました。

とらぼとらぼ
この一連の規制で、今後2〜3年でCDL保有者の5〜12%、人数にして21万〜44万人のドライバーが供給から消えるという推計もあるのだ。ただでさえ人手不足なのに、なのだ。

安全のための規制で、運ぶ人がいなくなる。安全と輸送力の板挟み──アメリカは今、この難問のど真ん中にいます。

で、日本はどうなんだ

ここからが本題です。日本でも2024年3月、在留資格「特定技能」にトラック・バス・タクシーの「自動車運送業」が追加されました。2025年3月には、特定技能では初めての外国人トラックドライバーが誕生。国は5年間で最大約2万4500人の受け入れを見込んでいます。

つまり日本は、アメリカが40年かけて歩いた道の入り口に立ったばかりなんです。

だからこそ、アメリカの「今」は他人事じゃない。俺が注目しているポイントは3つです。

1つ目は言葉。 アメリカは受け入れが先に進んで、言葉の問題が後から爆発しました。日本の特定技能は最初から日本語試験と日本の運転免許を要件にしています。標識、点呼、荷主とのやり取り──言葉は安全に直結する。ここは最初から丁寧にやるべきです。

2つ目はルールの安定性。 アメリカでは制度が急に変わって、真面目に働いてきたドライバーが突然免許を失う事態が起きています。人の人生を左右する制度は、コロコロ変えないでほしい。これは受け入れる側の責任です。

3つ目は仲間として迎えられるか。 フロリダの事故のあと、事故と関係ないシク教徒のドライバーへの嫌がらせが問題になりました。ひとつの事故で「外国人ドライバー全体」が悪者にされる。同じことを日本で繰り返しちゃいけない。ハンドルを握れば、国籍がどこだろうと同じ道を走る仲間ですから。

タイガのひとこと

20年この仕事をやってきて思うのは、トラックは「誰でもできる仕事」じゃなくて、「誰かがやらなきゃいけない仕事」だということ。アメリカではその「誰か」が移民でした。日本でも数年後、隣を走るトラックのドライバーが外国出身、というのが当たり前の光景になるかもしれません。

そのとき慌てないように、今からアメリカの成功と失敗を両方見ておく。それがこの「世界の物流」編でやりたいことです。

今日もご安全に。

3人でひとこと

ちびトラちびトラ
カリフォルニアのインド料理トラックストップ、ちょっと行ってみたいです!
タイガタイガ
わかる。俺もカレー補給しながらハイウェイ走りてえな。
とらぼとらぼ
ふっふっふ、僕は言語の壁がないので世界中どこでも点呼できるのだ。えっへん。
タイガタイガ
お前はまず日本の高速の合流を覚えてからな。

出典

※アメリカ国内の統計や制度の詳細は日本語での報道が少ないため、一部は英語の出典です。